平成29年予備試験民事訴訟法」カテゴリーアーカイブ

予備試験平成29年民事訴訟法設問2-結論-

目次

第1序論
第2本論
第3 結論
1 問いに答える
2 勝負の分かれ目


第3 結論

1 問いに答える

4のナンバリングでは、問いに対する結論を示す。
信義則に違反するかを論じただけでは、問いに答えたことにはならない。
設問2の問いは本件貸金債権の第2訴訟における審理・判断の可否1つであるから、最後は本件貸金債権全体について、その審理・判断が可能かどうかを示さなければならない。
本件貸金債権のうち既判力が及ぶ250万円部分については2のナンバリングで、既判力の及ばない200万円部分については3のナンバリングでそれぞれ論じた以上、
それらをまとめ、問いに対する結論を出すために、4のナンバリングを用意する必要があるのである。

2 勝負の分かれ目

・メインは何か

設問2のメインは、何か。
信義則の適用がメインだ。
そう思う人もいるかもしれない。
しかし、信義則の適用はあくまで例外的な場合である。
例外は、原則がなければ生じない。
原則である既判力についてしっかりと論じる事ができなければ、信義則の検討はできないのである。

・どこで差がつくか

差がつくのは、信義則の検討にどのようにして辿りつくかである。
問いに答えるためには原則として既判力を検討するのみでよいのだから、まずは既判力の適用についてしっかりと論じる必要がある。
その上で、信義則の検討をすることになる。

・順序を踏む

思いついた内容を、ただ論じればいいのではない。
それをどのような順番で論じるか、適切な順序を踏むことは非常に重要である。
既判力の適用については、範囲と作用についてそれぞれ論じる必要がある。
信義則違反を検討するのは、それからである。
このように、適切な手順を踏んで問題を検討できるかが、勝負の分かれ目になるといえる。
もっとも、既判力について範囲と作用を意識的に分けて検討するなど、既判力の検討について充実した論述ができる受験生がそもそも少数ではないだろうか。

・全体を俯瞰する

設問2は、第1訴訟を全体としてみて判断する必要がある。
本件貸金債権について、既判力の検討にとどまらず、訴訟の過程をみた上で信義則の検討も行わなければいけない。
既判力と信義則はレベルを揃える必要がある以上、それぞれを独立したナンバリングで論じるべきである。
既判力と信義則をそれぞれ独立したナンバリングで検討しているかを確認すれば、答案を書いた人がこの問題を理解しているかはおおよそ確認できる。
信義則にたどり着けていれば、既判力についてそれなりの検討はできていると考えられるといえるからである。
信義則の具体的な適用は、細かな部分に過ぎない。
まずは大枠としての判断枠組みが整っているか。
内容にこだわらなくとも、構成だけで合格推定は働くのである。

・構成以外の注意点

もっとも、構成以外の部分でも見るべき点はある。
114条2項についての解釈、それに対するあてはめはどうか。
信義則の適用に対して判断基準を示せているかどうか。
こういった部分についても、注意して論じていく必要がある。

 

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信義則

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
2 信義則
(1)検討
(2)構成の決定
(3)帰結
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

~前回の復習~

1 既判力

(3)帰結

しかし、多くの人は第1訴訟の既判力が第2訴訟に作用するという結論を導くであろう。
この場合、本件貸金債権の300万円の不存在についての判断が第2訴訟に作用することになり、このため受訴裁判所は本件貸金債権の300万円の存否について改めて審理・判断することはできない(既判力の積極的作用)。
そうだとすれば、第2訴訟の訴訟物である本件貸金債権450万円のうち、250万円については、受訴裁判所は審理・判断を行うことはできない。
しかし、残りの200万円の存否については、受訴裁判所は審理・判断を行うことができることになる。

~復習終わり~

2 信義則

(1)検討

・内容の確認

本問の問題意識はここにある。
第1訴訟において、本件貸金債権はその全部について審理が行われ、既判力の及ばない残りの200万円についても、すでに弁済され不存在であるとの判断が判決理由中においてなされている。
それにもかかわらず、既判力が及ばないからといって、本件貸金債権のうち200万円の存否について受訴裁判所が審理・判断を行えるとの結論を導く。
このようにしてしまうと、前訴の紛争を蒸し返してしまうことにならないか。
ここで信義則(2条)による審理・判断の遮断が問題となるのである。

大枠変更の必要性

これにより、大枠の構成についても変更を迫られることになる。
既判力と信義則は適用する条文が異なる。
そのため、同じナンバリングで論じるわけにはいかない。
ナンバリングのレベルは揃える必要がある以上、既判力と信義則は同じレベルで論じる必要がある。
そこで、信義則については3のナンバリングで論じることにし、問いに対する結論は4のナンバリングで示すことにする。

(2)構成の決定

下位展開の検討

以上のことから、3のブロックでは、信義則が問題となることを指摘することになる。
そこで、信義則違反を検討するにあたり、ナンバリングの下位展開が必要かをまず検討する必要がある。

・信義則に潜む罠

信義則違反を論じるにあたっては、信義則という言葉をそのまま使うことはできるだけ避けるべきである。
信義則は曖昧で多様な内容を含む概念であり、事案に即して具体化していかないと、当事者の手続保障という民事訴訟の目的が十分に達成されないおそれがある。
そのため、信義則違反を検討するにあたっては、必ず具体的な判断内容を示す必要がある。
ところが、信義則は事案に即して具体化する必要があるため、いかなる場合にも妥当する明確な判断基準があるとはいえない。
このように判断基準が明確化されていない場合は、注意が必要である。

・民事訴訟の目的

民事訴訟の目的は、当事者の手続保障を達成することである。
判決においては、適用した条文や判断基準を明確にする必要がある。
適用された条文や判断基準が曖昧であったら、敗訴した当事者はたまったものではない。
自分はなぜ敗訴したのか。
その理由がわからなければ、泣くに泣けないのである。

・判断基準導出の必要性

信義則違反を論じるにあたっては、その判断基準を必ず示す必要がある。
判断基準が示されないまま、事実を引用されて信義則違反を導く。
このようにしてしまうと、信義則違反という結論を出すことは決まっていて、その結論に沿うように事実を引用したのかとも思われかねない。
まずは一般的な判断基準を示し、その基準に沿って事実を示し、結論を出す。
このようにすることで、当事者の手続保障が達成される。
法的三段論法の観点からすれば、事実を引用しながらの論証は極力避けるべきである。
まずは一般的な判断基準を示してから、事実を評価し結論を出す必要がある。

・下位構成の決定

そのため、論証を展開することは、信義則違反を論じるにあたって、非常に重要であるといえる。
抽象論と具体論を混同してしまうことは避けるべきであり、抽象論に論証として独立したナンバリングを与えるべきであろう。
そうすると、あてはめと結論に対しても独立したナンバリングが必要となる。
すなわち、(1)のナンバリングが論証、(2)のナンバリングがあてはめ、(3)のナンバリングが結論となる。
これにより、信義則違反の検討についてのナンバリングが決定する。

(3)帰結

(3)のナンバリングでは、本件貸金債権の200万円の存否を審理・判断する事が信義則により許されないかという問いに対する結論を述べることになる。
ここで出す結論は、本件貸金債権の一部である200万円の審理・判断の可否であって、本件貸金債権全部について論じたものではない。
本件貸金債権という一つの債権に対する審理・判断の可否、すなわち設問に対する結論は、4のナンバリングで示すことになる。

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既判力-作用&帰結-

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
(1)総説
(2)範囲
(3)作用
(4)帰結
2 信義則
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

1 既判力

(3)作用

・内容の確認

(2)のナンバリングで論じるべきことを確認する。
既判力の作用の問題とは、ある訴訟によりなされた判決の判断内容を、それとは別の訴訟に及ぼす必要があるかということである。
訴訟は無数に存在する中、なぜ特定の2つの訴訟の関係性を問題とする必要があるのか。
その必要性を示すものである。

・下位展開の検討

既判力の作用は、問題となる両訴訟の訴訟物を検討することになる。
両訴訟物が、同一関係、矛盾関係、先決関係のいずれかにある場合は、前訴の既判力は後訴の既判力に作用することになる。
これについては、抽象論を論じるにしても、上記の3つの場合に限り既判力が作用することを示すだけである。
長々と抽象論を展開する必要はないだろう。
抽象論に論証として独立したナンバリングを与えることは不要である。
第1訴訟と第2訴訟それぞれの訴訟物を示して、その関係性を論じるだけでも十分といえる。
ナンバリングの下位展開は不要であり、(2)のナンバリングの中で既判力の範囲について論じれば十分であろう。

(4)帰結

・既判力が及ばない場合

第1訴訟の既判力が、第2訴訟に作用しないとしたら、そこで検討は終了する。
第1訴訟の既判力が第2訴訟に作用しないとは、第1訴訟と第2訴訟の関係性が問題とならないことを意味する。
そうすると、問題は第2訴訟を単体としてみたときに、貸金債権の存否について審理・判断することができるかということになる。
しかし、これができることは前述したように自明のことである。
そのため、2のナンバリングで、審理・判断が可能であるとの結論を示せばよい。

・既判力が及ぶ場合

これに対し、多くの人は第1訴訟の既判力が第2訴訟に作用するという結論を導くであろう。
この場合、本件貸金債権の300万円の不存在についての判断が第2訴訟に作用することになる。
そうすると、受訴裁判所は本件貸金債権の300万円の存否について改めて審理・判断することはできない(既判力の積極的作用)。
そうだとすれば、第2訴訟の訴訟物である本件貸金債権450万円のうち、250万円については、受訴裁判所は審理・判断を行うことはできない。
しかし、残りの200万円の存否については、受訴裁判所は審理・判断を行うことができることになる。

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既判力-範囲-

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
(1)総説
(2)範囲
ア 検討
イ 構成の決定
ウ 具体的な検討
(3)作用
(4)結論
2 信義則
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

1 既判力

(2)範囲

ア 検討
・内容の確認

1のブロックで論じるべきことを確認する。
(1)のナンバリングで論じるべきことを確認する。
既判力の範囲の問題とは、判決の確定により生じた既判力に、判決中のいかなる判断が含まれるかということである。
既判力の範囲については、客観的範囲(114条)の問題と主観的範囲(115条)の問題があるが、本問で問題となるのは貸金債権の存否であるから、これは客観的範囲の問題に該当する。
そのため、今回は114条の解釈を行う必要がある。

・114条2項

114条は1項と2項に分かれる。
通常は1項の検討で十分なのだが、本問で問題となる貸金債権は、第1訴訟において相殺の抗弁として提出されている。
そのため、114条2項についても触れる必要がある。
1項と2項のそれぞれについて、その範囲についての解釈を論じる必要がある以上、これは論証として展開する必要があるだろう。

・1項の解釈の必要性

本件で問題となる貸金債権は、相殺の抗弁として提出されたものである。
そのため、114条1項についての解釈は不要で、2項についての解釈のみ論ずればいいかと思うかもしれない。
しかし、原則として既判力は1項に該当する事項にしか生じず、2項は例外的に判決理由中の判断について既判力を認めた規定である。
例外は、原則があるからこそ生まれるものである。
1項について論じずに、2項について論じることはできない。

イ 構成の決定
・下位展開の決定

したがって、(1)のブロックでは、貸金債権の存否についての判断が、第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかについて論じることになる。
本問では、114条の1項と2項についてそれぞれ解釈を展開する必要がある。
そのため、(1)のナンバリングでは、(1)ブロックで検討すべき事項を提示するにとどめ、具体的内容は(1)のナンバリングの中で下位のナンバリングを展開して論じるべきであろう。

・下位展開の検討

下位のナンバリングをどのようにすべきか検討する。
問いに答える結論部分に独立したナンバリングを与えたのと同様に、貸金債権の存否についての判断が、第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかという(1)ブロックの問いに対する結論部分にも独立したナンバリングを与えるべきであろう。
114条1項2項については、そのそれぞれについて条文の文言を解釈する必要がある。
文言を解釈し、判断基準を導くまでの抽象論を論証として、独立したナンバリングを与える。
そして、本件において貸金債権の存否についての判断が第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかを具体的に検討する部分を当てはめとして、独立したナンバリングにする。
すなわち、アのナンバリングが論証、イのナンバリングがあてはめ、ウのナンバリングが結論となる。
これにより、既判力の範囲の検討についてのナンバリングが決定する。

ウ 具体的な検討
・具体的検討の必要性

本来であれば、構成の決定までを論じるにとどめ、具体的な内容には立ち入らない。
しかし、今回は具体的な検討まで論じなければ、その後の構成について考えることができないので、既判力の範囲について具体的に検討することにする。

・文言の解釈

まずは、条文の文言を解釈する。
114条1項の「主文に包含するもの」とは、審理の簡易化・弾力化の観点から、訴訟物に関する判断内容に限られるとする。
そして、114条2項については、理由は少し長くなるので割愛するが、訴訟物の範囲に対応する反対債権の不存在について既判力が生じるとの解釈を行う。

・解釈に対するあてはめ

これを本件についてみる。
第1訴訟の訴訟物は、300万円の不当利得返還請求権である。
そのため、同条1項により、300万円の存在について既判力が生じる。
そして、第1訴訟では、本件貸金債権のうち、450万円について弁済されているとし、残りの50万円の範囲において相殺を認めている。
50万円についても相殺により消滅するから、2項により訴訟物に対応する範囲、
すなわち本件貸金債権の300万円の不存在について既判力が生じることになる。

・ブロック部分の結論

これにより、ブロック冒頭の問いに対する結論が得られる。
第1訴訟の既判力には、本件貸金債権の一部である300万円の不存在についての判断が含まれ、残りの200万円についての判断については含まれない。
本件貸金債権の一部である200万円についての判断に既判力が生じなかったことが、のちに問題となる。

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既判力-総説-

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
(1)総説
ア 検討
イ 構成の決定
ウ 1のブロックの構成の決定
(2)範囲
(3)作用
(4)結論
2 信義則
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

1 既判力

(1)総説

ア 検討
・第2訴訟を単体としてみる

1のブロックで論じるべきことを確認する。
第2訴訟とは便宜上つけられた呼び方に過ぎず、第2訴訟自体1つの独立した訴訟であるから、
まずは第2訴訟を単体として見て、貸金債権の存否について審理・判断することができるかを検討する必要がある。
しかし、貸金債権はこの訴訟の訴訟物であるから、第2訴訟を単体としてみたときに貸金債権の存否について審理・判断できるのは当然であろう。
余りにも自明のことであり、答案で論じる必要もない。
問題文にも、「改めて」という言葉が使われていることからも、上記の事項について論じることは不要であろう。

・第2訴訟と名付ける意味

では、何について論じるべきか。
ここで、問いの冒頭の「第2訴訟」という言葉に着目する必要がある。
上述の通り、第2訴訟とは、便宜上つけられたものであるが、第2とする以上、第1があるはずである。
つまり、この設問は、第2訴訟と第1訴訟の関係性を問題としているといえる。

・検討内容の決定

訴訟間の関係が問題となり、後に続く訴訟の審理・判断が問題になるとしたら、論じるべき事項は既判力であろう。
既判力とは、前訴の判決の判断内容の後訴における通用力ないし判断力のことをいう。
前訴(第1訴訟)においてなされた貸金債権に対する判断が第2訴訟において影響を及ぼすか。
これを検討する必要がある。
1のナンバリングでは、第1訴訟において生じた既判力について論じることになる。

・既判力の分解

既判力は、範囲と作用に分けて検討する必要がある。
範囲の問題点は、第1訴訟の既判力に貸金債権の存否についての判断が含まれるかということである。
そして、作用の問題点は、第1訴訟で生じた既判力が、第2訴訟の審理・判断に影響を及ぼすかということである。
問いに答えるためには、この2つの点について検討する必要がある。

イ 構成の決定
・構成決定の重要性

論じるべき内容を決定したら、次はそれを論じるための構成を考える必要がある。
ここで決定されるナンバリングは、答案の大枠を構成するものであり、
答案を完成させる上で非常に重要なものとなる。

・結論部分のナンバリング決定

まず、答えなければならない結論部分に対して、独立したナンバリングを与える。
問題作成者が最も聞きたいことであり、こちらが最も伝えたい部分であるから、
独立したナンバリングを与えて相手の目にとまるようにする。

・要件提示部分のナンバリング決定

次に、問いに答えるための要件を提示する部分に対してナンバリングを与える。
第2訴訟において、受訴裁判所が、
貸金債権の存否について、改めて審理・判断するために必要とされることは、
貸金債権について改めて審理・判断することが第1訴訟の既判力に抵触しないことである。
そのため、1のナンバリングで、第1訴訟判決の確定により既判力が生じたこと、
及び受訴裁判所が貸金債権について改めて審理・判断するためには、
その審理・判断が第1訴訟の既判力に抵触しない必要があることを指摘する。
既判力の意義についても、ここで触れておくべきであろう。

・大枠の暫定的な決定

1のナンバリングで既判力の検討は終了し、
ほとんどの場合はここで問いに答えるための検討が終了するであろうから、
結論部分は2のナンバリングで論じることになると思われる。
これにより、一応、大枠のナンバリングが決定する。

ウ 1のブロックの構成の決定
・何を論じるか

1のナンバリングで指摘すべきことはすでに述べた。
そして、既判力については範囲と作用に分けて検討すべきこともすでに述べている。
次の問題は、範囲と作用をどのようにして論じるかということである。

・レベルを揃える

ナンバリングでは、レベルを揃えるべきである。
範囲と作用の問題は、既判力から派生する限りにおいてそのレベルは同一であるから、
ナンバリングのレベルは揃える必要がある。
そのため、(1)のナンバリングで範囲について、
(2)のナンバリングで作用について論じることにする。

・結論の必要性

また、既判力を範囲と作用に分けて検討した以上、
最後はそれを一つにまとめて、ブロック冒頭の問いに対する結論を示す必要がある。
1のブロックにおける問いは、第1訴訟の既判力が第2訴訟において影響を及ぼすかである。
そのため、(3)のナンバリングでブロック冒頭の問いに対する結論を示す。
これにより、1ブロックのナンバリングの下位構成が決定する。

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予備試験平成29年民事訴訟法設問2-序論-

目次

第1 序論
1 やるべきことは何か
2 問いは何個か
3 答えるべき事項は何か
第2 本論
第3 結論


第1 序論

1 やるべきことは何か

問題を解くために絶対やらなければならないことは何か。
それは問いに答えることである。
問題文の冒頭には、このように示されている。

「次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。」

事例及び各設問はこの後に続くものである。
つまり、問題作成者は問いに対する結論を一番に求めている。
問題作成者が一番に求めていることを疎かにしてはいけない。
過程はどうあれ、問いに対する結論は絶対に書かなければいけないのである。

2 問いは何個か

設問2の問いは何か。
問いは、「第2訴訟において、受訴裁判所は、貸金債権の存否について改めて審理・判断をすることができるか、検討しなさい。」である。
つまり、設問2における問いは1つ。
「第2訴訟における、貸金債権の存否についての審理・判断の可否」。
これだけである。

3 答えるべき事項は何か

問いに答えるためにしなければならないことは、問いに対する結論を出すことである。
本問において、考えられる結論としては、
「第2訴訟において、受訴裁判所は、貸金債権の存否について改めて審理・判断をすることができる。」あるいは
「第2訴訟において、受訴裁判所は、貸金債権の存否について改めて審理・判断をすることができない。」、このどちらかしかない。
結論は必ず、このどちらかの文で終える必要がある。

 

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平成29年予備試験民事訴訟法設問1-結論-

目次

第1序論
第2本論
第3 結論
1 問いに答える
2 勝負の分かれ目


第3 結論

1 問いに答える

4のナンバリングでは、問いに対する結論を示す。
現在給付の訴えと将来給付の訴えのそれぞれについて訴えの利益を論じただけでは、問いに答えたことにはならない。
設問1の問いは本件訴訟の適法性の有無1つであるから、最後は本件訴訟が適法か否かを示さなければならない。
本件訴訟を2つに分解し、2と3のナンバリングでそれぞれについて論じた以上、
それらをまとめ、問いに対する結論を出すために、4のナンバリングを用意する必要があるのである。

2 勝負の分かれ目

・メインは何か

設問1のメインは、将来給付の訴えにおける訴えの利益であることは間違いないであろう。
しかし、将来給付の訴えにおける請求適格については、多くの受験生は適切な当てはめなどできないだろうし、そもそも判断基準を正確に示せるかも怪しいところである。
将来給付の訴えの利益の検討において、受験生同士に差がつくとは考え難い。
少なくとも、合格を争うレベルにおいては、まともな検討などできないと考えられる。

・どこで差がつくか

差がつくのは、将来給付の訴えにおける訴えの利益の検討にどのようにして辿りつくかである。
問いは一つなのだから、まず本件訴訟に訴えの利益が認められる必要があることを指摘する必要がある。
その上で、現在給付の訴えについて訴えの利益を検討する。
将来給付の訴えについて訴えの利益を検討するのは、それからである。
このような手順を踏んで問題を検討できるかが、勝負の分かれ目になると考えられる。
もっとも、このような手順を踏める受験生は少数であるだろうから、これができるだけで相当上位になると考えられる。
内容にこだわらなくとも、構成だけで合格推定が働くのである。

・設問1のテーマ

設問1のテーマは訴えの利益である。
将来給付の訴え云々以前に、訴えの利益という言葉が出てこないと話にならない。
冒頭の1段落で訴えの利益という言葉が出せるか。
その次に現在給付の訴えの利益を検討できているか。
この2点だけ見れば、答案を書いた人がこの問題を理解しているかを確認できる。
そこまでいけていれば、将来給付の訴えの利益についても検討しているだろうと推定できる。
上記の2点だけみれば、合格答案か否かを推定できるのである。

 

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平成29年予備試験民事訴訟法設問1-本論②-

目次

第1序論
第2本論
1 訴えの利益
2 現在給付の訴え
3 将来給付の訴え
(1)請求適格
ア 検討
イ 構成の決定
(2)「あらかじめその請求をする必要がある場合」
(3)帰結
第3結論


第2 本論

3 将来給付の訴え

・内容の確認

3のナンバリングで論じるべきことを確認する。
将来給付の訴えについては、135条にその要件が規定されている。
同条の要件に加えて、将来給付の訴えを提起するためには請求適格が認められる必要がある。
そのため、(1)で請求適格が認められるかを、(2)で「あらかじめその請求をする必要がある場合」にあたるかをそれぞれ検討することになる。
最後に、(3)で将来給付の部分についての訴えの利益があるかという、3のブロック冒頭の問いについての結論を述べる。

(1)請求適格

ア 検討
・内容の確認

(1)のナンバリングでは、請求適格の有無を検討する。
将来給付の訴えだからといって、請求適格を必ず検討しなければいけないわけではない。
請求適格の有無について論じるべきか、まず検討する必要がある。

・詳細な検討が不要な場合

期限未到来や停止条件未成就の請求権を内容とする場合は、請求適格は肯定される。
請求権の基礎となる事実関係はすでに発生しているといえるからである。

・詳細な検討が必要な場合

これに対して、将来の不法行為に対する損賠賠償請求権など、請求権の基礎となる事実すらいまだ発生していない請求権を内容とする場合は、請求適格が問題になる。
この場合には、請求適格について詳細な検討が必要になる。

・本問の検討

本件訴訟がどちらに該当するかを検討する。
本件賃貸借契約は、AY間で締結されたものである。
Xは、本件賃貸借契約後に、甲土地をYと共有するようになったにすぎず、本件賃貸借契約の当事者ではない。
Xは、Yが受け取った賃料のうち、Xの持分に相当する部分をYから交付されているにすぎない。
そのため、Xが受け取る金銭はYがAから賃料を回収しないと生じない。
YがAから賃料を受け取らなければ、Xに対して支払うべき金銭は発生しないのである。
そうだとすれば、XのYに対する請求権の基礎となる事実すらいまだ発生しているとはいえず、本問は請求適格の有無が問題となる場合にあたる。

イ 構成の決定
・下位展開の決定

以上のことから、(1)のナンバリングでは、請求適格の有無が問題となることを指摘することになる。
請求適格の有無については、詳細な検討が必要になる。
(1)のナンバリングでは、請求適格の有無というトピックを提示するにとどめ、
具体的内容は(1)のナンバリングの中で下位のナンバリングを展開して論じるべきであろう。

・下位展開の検討

下位のナンバリングをどのようにすべきか検討する。
問いに答える結論部分に独立したナンバリングを与えたのと同様に、
請求適格の有無に対する結論部分にも独立したナンバリングを与えるべきであろう。
請求適格の有無を判断するためには、その判断基準を導く必要がある。
判断基準を導くまでの抽象論を論証として、独立したナンバリングを与える。
そして、本件において請求適格が認められるかを具体的に検討する部分を当てはめとして、独立したナンバリングにする。
すなわち、アのナンバリングが論証、イのナンバリングがあてはめ、ウのナンバリングが結論となる。これにより、請求適格の有無の検討についてのナンバリングが決定する。

(2)「あらかじめその請求をする必要がある場合」

・内容の確認

(2)のナンバリングでは、「あらかじめその請求をする必要がある場合」といえるかを検討する。
これは義務者の態度、給付義務の目的・性質などを考慮して個別具体的に決定されることになる。
こちらについては、請求適格のように大々的に展開して検討する必要はない。
規範を提示して、端的に当てはめるだけで十分であろう。

・下位展開の検討

下位のナンバリング展開は不要と考える。
論証、当てはめ、結論がそれぞれ1行では、ナンバリングにより改行すると余計な分量を割いてしまう。
さらに、1行ごとにナンバリングをつけていては、相手に何も考えずにナンバリングをしているのかと思われかねない。
ナンバリングは意味があってつけるものである。
しかし、意味内容ごとの分量や答案の分量に応じて柔軟な対応を取る必要がある。

(3)帰結

(3)のナンバリングでは、本件訴訟のうち将来給付の訴えの部分に訴えの利益があるかという問いに対する結論を述べることになる。
ここで出す結論は、将来給付の訴え部分における訴えの利益の有無であって、本件訴訟全部について論じたものではない。
本件訴訟という一つの訴訟に対する訴えの利益の有無、すなわち設問に対する結論は、4のナンバリングで示すことになる。

 

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平成29年予備試験民事訴訟法設問1-本論①-

目次

第1序論
第2本論
1 訴えの利益
(1)検討
(2)構成の決定
2 現在給付の訴え
3 将来給付の訴え
第3結論


第2 本論

1 訴えの利益

(1)検討
・要件の確認

1のナンバリングで論じるべきことを確認する。
民事訴訟において、訴えが適法になるための要件は何か。
それは、訴えの利益が認められることである。
つまり、本問では、不当利得返還請求(以下、「本件訴訟」という。)の訴えの利益の有無を検討すればよいことになる。
訴えの利益を検討すべき訴訟は、あくまで1つである。

・本件訴訟の分解

本件訴訟は、既発生の利得分に加えて、訴え提起の時点では未発生である利得分も請求している。
つまり、本件訴訟は、基準時(口頭弁論終結時)までに履行期が到来する給付請求権を内容とする現在給付の訴えに相当する部分と、
基準時までに履行すべき状態にない給付請求権を内容とする将来給付の訴えに相当する部分に分けられる。
そのため、本件訴訟を2つの部分に分けて訴えの利益を検討しなければならない。

(2)構成の決定
・構成決定の重要性

論じるべき内容を決定したら、次はそれを論じるための構成を考える必要がある。
ここで決定されるナンバリングは、答案の大枠を構成するものであり、
答案を完成させる上で非常に重要なものとなる。

・結論部分のナンバリング決定

まず、答えなければならない結論部分に対して、独立したナンバリングを与える。
問題作成者が最も聞きたいことであり、こちらが最も伝えたい部分であるから、
独立したナンバリングを与えて相手の目にとまるようにする。

・要件提示部分のナンバリング決定

次に、問いに答えるための要件を提示する部分に対してナンバリングを与える。
本件訴訟が適法であるために必要とされることは、本件訴訟に訴えの利益が認められることである。
そして、その検討のためには、本件訴訟を現在給付の訴えの部分と将来給付の訴えの部分に分ける必要がある。
そのため、1のナンバリングで、
本件訴訟が適法であるためには、本件訴訟に訴えの利益が認められる必要があること及び
本件訴訟が現在給付の訴えの部分と将来給付の訴えの部分に分けられることを指摘する。

・要件検討部分のナンバリング決定

そして、現在給付の訴えの部分と、将来給付の訴えの部分のそれぞれについて、訴えの利益を検討する。
具体的には、2のナンバリングで現在給付の訴えについての訴えの利益を、
3のナンバリングで将来給付の訴えについての訴えの利益を検討することになる。

・大枠の決定

1、2、3のナンバリングで訴えの利益の検討は終了するから、結論部分は4のナンバリングで論じることになる。
これにより、大枠のナンバリングが決定する。

2 現在給付の訴え

・内容の確認

2のナンバリングで論じるべきことを確認する。
現在給付の訴えについては、訴えの利益が認められるのが通常である。
そのため、独立したナンバリングを設けても、訴えの利益が認められることを一言指摘するだけで十分であろう。

・独立したナンバリングの必要性

簡潔な指摘にとどまるなら、1のナンバリングの中で論じていいのではないかとも思われる。
しかし、あくまで問いは1つであり、本件訴訟を2つの部分に便宜的に分けているにすぎない。
1のナンバリングで論じるべき部分は、4のナンバリングの結論に答えるために必要な要件である。
そのため、1のナンバリングでは本件訴訟に訴えの利益が認められることが必要と指摘するのみで十分であり、それ以上の部分については2以降のナンバリングで論じるべきであろう。

・レベルを揃える

ナンバリングは、レベルを揃えるべきである。
現在給付の訴えと将来給付の訴えは、訴えの利益から派生する限りにおいてそのレベルは同一であるから、同じレベルのナンバリングで論じるべきである。
そのため、現在給付の訴えを1のナンバリングの中に吸収させず、独立したナンバリングを用意することで、将来給付の訴えとレベルを揃えているのである。

 

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平成29年予備試験民事訴訟法設問1-序論-

目次

第1 序論
1 やるべきことは何か
2 問いは何個か
3 答えるべき事項は何か
第2 本論
第3 結論


第1 序論

1 やるべきことは何か

問題を解くために絶対やらなければならないことは何か。
それは問いに答えることである。
問題文の冒頭には、このように示されている。

「次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。」

事例及び各設問はこの後に続くものである。
つまり、問題作成者は問いに対する結論を一番に求めている。
問題作成者が一番に求めていることを疎かにしてはいけない。
過程はどうあれ、問いに対する結論は絶対に書かなければいけないのである。

2 問いは何個か

設問1の問いは何か。
問いは、「不当利得返還請求訴訟を提起することの適法性の有無について論じなさい。」である。
その直前に、「訴え提起の時点では未発生である利得分も含めて」と書かれているが、これは不当利得請求訴訟の一部を切り取ったものに過ぎない。
あくまで、提起された訴訟は一つである。

設問1における問いは1つ。
「不当利得返還請求訴訟を提起することの適法性」。
これだけである。

3 答えるべき事項は何か

問いに答えるためにしなければならないことは、問いに対する結論を出すことである。
本問において、考えられる結論としては、
「不当利得返還請求訴訟を提起することは適法である。」あるいは
「不当利得返還請求訴訟を提起することは不適法である。」、このどちらかしかない。
結論は必ず、このどちらかの文で終える必要がある。

 

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