信義則

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
2 信義則
(1)検討
(2)構成の決定
(3)帰結
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

~前回の復習~

1 既判力

(3)帰結

しかし、多くの人は第1訴訟の既判力が第2訴訟に作用するという結論を導くであろう。
この場合、本件貸金債権の300万円の不存在についての判断が第2訴訟に作用することになり、このため受訴裁判所は本件貸金債権の300万円の存否について改めて審理・判断することはできない(既判力の積極的作用)。
そうだとすれば、第2訴訟の訴訟物である本件貸金債権450万円のうち、250万円については、受訴裁判所は審理・判断を行うことはできない。
しかし、残りの200万円の存否については、受訴裁判所は審理・判断を行うことができることになる。

~復習終わり~

2 信義則

(1)検討

・内容の確認

本問の問題意識はここにある。
第1訴訟において、本件貸金債権はその全部について審理が行われ、既判力の及ばない残りの200万円についても、すでに弁済され不存在であるとの判断が判決理由中においてなされている。
それにもかかわらず、既判力が及ばないからといって、本件貸金債権のうち200万円の存否について受訴裁判所が審理・判断を行えるとの結論を導く。
このようにしてしまうと、前訴の紛争を蒸し返してしまうことにならないか。
ここで信義則(2条)による審理・判断の遮断が問題となるのである。

大枠変更の必要性

これにより、大枠の構成についても変更を迫られることになる。
既判力と信義則は適用する条文が異なる。
そのため、同じナンバリングで論じるわけにはいかない。
ナンバリングのレベルは揃える必要がある以上、既判力と信義則は同じレベルで論じる必要がある。
そこで、信義則については3のナンバリングで論じることにし、問いに対する結論は4のナンバリングで示すことにする。

(2)構成の決定

下位展開の検討

以上のことから、3のブロックでは、信義則が問題となることを指摘することになる。
そこで、信義則違反を検討するにあたり、ナンバリングの下位展開が必要かをまず検討する必要がある。

・信義則に潜む罠

信義則違反を論じるにあたっては、信義則という言葉をそのまま使うことはできるだけ避けるべきである。
信義則は曖昧で多様な内容を含む概念であり、事案に即して具体化していかないと、当事者の手続保障という民事訴訟の目的が十分に達成されないおそれがある。
そのため、信義則違反を検討するにあたっては、必ず具体的な判断内容を示す必要がある。
ところが、信義則は事案に即して具体化する必要があるため、いかなる場合にも妥当する明確な判断基準があるとはいえない。
このように判断基準が明確化されていない場合は、注意が必要である。

・民事訴訟の目的

民事訴訟の目的は、当事者の手続保障を達成することである。
判決においては、適用した条文や判断基準を明確にする必要がある。
適用された条文や判断基準が曖昧であったら、敗訴した当事者はたまったものではない。
自分はなぜ敗訴したのか。
その理由がわからなければ、泣くに泣けないのである。

・判断基準導出の必要性

信義則違反を論じるにあたっては、その判断基準を必ず示す必要がある。
判断基準が示されないまま、事実を引用されて信義則違反を導く。
このようにしてしまうと、信義則違反という結論を出すことは決まっていて、その結論に沿うように事実を引用したのかとも思われかねない。
まずは一般的な判断基準を示し、その基準に沿って事実を示し、結論を出す。
このようにすることで、当事者の手続保障が達成される。
法的三段論法の観点からすれば、事実を引用しながらの論証は極力避けるべきである。
まずは一般的な判断基準を示してから、事実を評価し結論を出す必要がある。

・下位構成の決定

そのため、論証を展開することは、信義則違反を論じるにあたって、非常に重要であるといえる。
抽象論と具体論を混同してしまうことは避けるべきであり、抽象論に論証として独立したナンバリングを与えるべきであろう。
そうすると、あてはめと結論に対しても独立したナンバリングが必要となる。
すなわち、(1)のナンバリングが論証、(2)のナンバリングがあてはめ、(3)のナンバリングが結論となる。
これにより、信義則違反の検討についてのナンバリングが決定する。

(3)帰結

(3)のナンバリングでは、本件貸金債権の200万円の存否を審理・判断する事が信義則により許されないかという問いに対する結論を述べることになる。
ここで出す結論は、本件貸金債権の一部である200万円の審理・判断の可否であって、本件貸金債権全部について論じたものではない。
本件貸金債権という一つの債権に対する審理・判断の可否、すなわち設問に対する結論は、4のナンバリングで示すことになる。

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