既判力-範囲-

目次

第1序論
第2本論
1 既判力
(1)総説
(2)範囲
ア 検討
イ 構成の決定
ウ 具体的な検討
(3)作用
(4)結論
2 信義則
第3結論


引き続き、予備試験平成29年民事訴訟法設問2を検討する。

第2 本論

1 既判力

(2)範囲

ア 検討
・内容の確認

1のブロックで論じるべきことを確認する。
(1)のナンバリングで論じるべきことを確認する。
既判力の範囲の問題とは、判決の確定により生じた既判力に、判決中のいかなる判断が含まれるかということである。
既判力の範囲については、客観的範囲(114条)の問題と主観的範囲(115条)の問題があるが、本問で問題となるのは貸金債権の存否であるから、これは客観的範囲の問題に該当する。
そのため、今回は114条の解釈を行う必要がある。

・114条2項

114条は1項と2項に分かれる。
通常は1項の検討で十分なのだが、本問で問題となる貸金債権は、第1訴訟において相殺の抗弁として提出されている。
そのため、114条2項についても触れる必要がある。
1項と2項のそれぞれについて、その範囲についての解釈を論じる必要がある以上、これは論証として展開する必要があるだろう。

・1項の解釈の必要性

本件で問題となる貸金債権は、相殺の抗弁として提出されたものである。
そのため、114条1項についての解釈は不要で、2項についての解釈のみ論ずればいいかと思うかもしれない。
しかし、原則として既判力は1項に該当する事項にしか生じず、2項は例外的に判決理由中の判断について既判力を認めた規定である。
例外は、原則があるからこそ生まれるものである。
1項について論じずに、2項について論じることはできない。

イ 構成の決定
・下位展開の決定

したがって、(1)のブロックでは、貸金債権の存否についての判断が、第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかについて論じることになる。
本問では、114条の1項と2項についてそれぞれ解釈を展開する必要がある。
そのため、(1)のナンバリングでは、(1)ブロックで検討すべき事項を提示するにとどめ、具体的内容は(1)のナンバリングの中で下位のナンバリングを展開して論じるべきであろう。

・下位展開の検討

下位のナンバリングをどのようにすべきか検討する。
問いに答える結論部分に独立したナンバリングを与えたのと同様に、貸金債権の存否についての判断が、第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかという(1)ブロックの問いに対する結論部分にも独立したナンバリングを与えるべきであろう。
114条1項2項については、そのそれぞれについて条文の文言を解釈する必要がある。
文言を解釈し、判断基準を導くまでの抽象論を論証として、独立したナンバリングを与える。
そして、本件において貸金債権の存否についての判断が第1訴訟の既判力の範囲に含まれるかを具体的に検討する部分を当てはめとして、独立したナンバリングにする。
すなわち、アのナンバリングが論証、イのナンバリングがあてはめ、ウのナンバリングが結論となる。
これにより、既判力の範囲の検討についてのナンバリングが決定する。

ウ 具体的な検討
・具体的検討の必要性

本来であれば、構成の決定までを論じるにとどめ、具体的な内容には立ち入らない。
しかし、今回は具体的な検討まで論じなければ、その後の構成について考えることができないので、既判力の範囲について具体的に検討することにする。

・文言の解釈

まずは、条文の文言を解釈する。
114条1項の「主文に包含するもの」とは、審理の簡易化・弾力化の観点から、訴訟物に関する判断内容に限られるとする。
そして、114条2項については、理由は少し長くなるので割愛するが、訴訟物の範囲に対応する反対債権の不存在について既判力が生じるとの解釈を行う。

・解釈に対するあてはめ

これを本件についてみる。
第1訴訟の訴訟物は、300万円の不当利得返還請求権である。
そのため、同条1項により、300万円の存在について既判力が生じる。
そして、第1訴訟では、本件貸金債権のうち、450万円について弁済されているとし、残りの50万円の範囲において相殺を認めている。
50万円についても相殺により消滅するから、2項により訴訟物に対応する範囲、
すなわち本件貸金債権の300万円の不存在について既判力が生じることになる。

・ブロック部分の結論

これにより、ブロック冒頭の問いに対する結論が得られる。
第1訴訟の既判力には、本件貸金債権の一部である300万円の不存在についての判断が含まれ、残りの200万円についての判断については含まれない。
本件貸金債権の一部である200万円についての判断に既判力が生じなかったことが、のちに問題となる。

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