殺人未遂罪-総説-

目次

第1序論
第2本論
1 総説
2 殺人未遂罪
(1)総説
(2)実行行為性
(3)実行の着手時期
(4)結果未発生
(5)故意
(6)結論
3 殺人罪
第3結論


引き続き、予備試験平成29年刑法の甲の罪責を検討する。

第2 本論

2 殺人未遂罪

(1)総説

ア 検討
・内容の確認

1のブロックで論じるべきことを確認する。
刑法においては、条文上に規定されている構成要件を全て満たすことによって、その犯罪が成立する。
そのため、基本的には問題となる犯罪(条文)を指摘し、その構成要件を1つ1つ確認していけばよい。

・殺人未遂罪の検討

1のブロックでは、劇薬Xを注入したワインをV宅宛てに宅配便で送った行為に対して殺人未遂罪(203条、199条)の成否を検討する。
甲は、殺意を持って同行為を行なっているから、殺人罪の検討もありうる。
しかし、Vの死亡という結果が発生していない以上、殺人罪が成立しないことは明白であり、殺人未遂罪について検討することになるだろう。

・犯罪の成否の検討

犯罪の成否の検討は、構成要件を1つ1つ確認することによって行われる。
該当することが明らかな構成要件に対しては淡々と当てはめればよい。
これに対して、該当するか微妙である構成要件に対しては、解釈を展開し、事実を当てはめていく必要がある。
殺人未遂罪(殺人罪)の構成要件は、「人を殺した」ことである。

・総論的体系の意識

犯罪の成否を検討するためには、構成要件該当性だけでなく、刑法の総論的体系を意識する必要がある。
犯罪の成否の検討は、構成要件、違法性、責任の順番に行われる。
基本は構成要件該当性を確認していく作業であり、事案に応じて必要的に違法性阻却事由や責任阻却事由の存否について検討していくことになる。

・検討すべき事項の確認

本問で検討すべき事項を確認する。
犯罪の成否を検討する際の基本は、構成要件を検討することであるから、「人を殺した」という構成要件について検討する必要がある。
また、本問では、違法性阻却事由や責任阻却事由を検討すべき事情はない。
そのため、今回は構成要件のみを検討すればよい。

・構成要件の類型

構成要件は、客観的構成要件と主観的構成要件の2つがある。
客観的構成要件は、実行行為、因果関係、結果の要素が含まれる。
主観的構成要件は、構成要件的故意のことをさす。
これらについて、問題となる点があるか検討していけばよい。
今回は、8mlの劇薬Xを注入したことに対して実行行為性が、宅配便で送ったという行為に対して実行の着手時期が、それぞれ問題となる。
さらに、結果と故意についても指摘すべき事情がある。
これらについて、論じていくことになる。

イ 構成の決定
・内容の検討

1のナンバリングでは、検討すべき行為及び犯罪を提示することになる。
この段階では、行為と犯罪を提示するにとどめ、個々の検討は下位のナンバリングを展開して行うべきであろう。
そのため、下位構成をどのようにすべきか決定する必要がある。

・下位展開の問題

1のブロックで検討すべき行為及び犯罪は確定している。
そして、検討すべき事項もすでに決定している。
問題は、これらをどのようにして論じるかということである。

・レベルを揃える

ナンバリングでは、レベルを揃えるべきである。
実行行為性と実行の着手時期、結果、そして故意は構成要件要素である限りにおいてそのレベルは同一であるから、ナンバリングのレベルは揃える必要がある。
そのため、(1)のナンバリングで実行行為性について、(2)のナンバリングで実行の着手時期について、(3)のナンバリングで結果について、(4)のナンバリングで故意についてそれぞれ論じることにする。

・下位構成の決定

また、構成要件該当性を要素に分けて検討した以上、最後はそれを一つにまとめて、犯罪の成否の検討に対する結論を示す必要がある。
1のブロックで検討している事柄は、劇薬Xを注入したワインをV宅宛てに宅配便で送った行為に対して殺人未遂罪が成立するかである。
そのため、(5)のナンバリングで犯罪の成否に対する結論を示す。
これにより、1ブロックのナンバリングの下位構成が決定する。

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